ぬの字鼠~桂米朝


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木の葉で描いたぬの字が

ぬの字鼠~桂米朝

昔は出家たるものは、肉喰妻帯は厳しく禁止され、特に女犯の罪ということになると寺社奉行によって唐傘一本で追い出されるということになっていました。

ある寺の和尚、小坊主の智円に小言を言っています。最近精が衰えてお経を読む声にも力がなくなってきたので、智円に鰹節を削らせていましたが、檀家の和泉屋が見てみぬふりをして通ろうとしているのに、お前は慌てて小刀を後ろへ隠して鰹節を前へ突き出して「堺の菊一で買ってきた。よく切れる小刀だ」と言った。

和泉屋さんはわかっていて「小刀はええけど、後ろの鰹節で怪我しなはんなや」奥へ通ってお前がお茶を出した時には「台所の方はちゃんと片付けといたか?」と聞かれて「鰹節ですか」とダメ押しまでした。

また、門前の花屋さんに「実は自分は和尚の子供だ」と言った。そういう事は言ってはならんと言っているのに、もう三度目だ。勘弁ならんと智円を墓場へ連れて行って後ろ手に木に繋いでしまいます。

覚書

鼠の絵のくだりについて米朝は、画家 雪舟が寺の小僧であった時の逸話が、『祇園祭礼信仰記』金閣寺の段の雪姫の話として芝居になったもので、当時は芝居のほうが親しみがあったために雪舟は出さず、雪姫のこととして語られたのだろうと言っています。

また、和尚が息子の智円を手元に置いたことについて、「本当なら商家へ奉公にでも出せばそのほうが良いのでしょうが、父親としては手元に置きたい、しかし公然と親子とは言えぬ・・今なら非行少年になりかねない要素もあるわけですが、昔はこのようにきびしくしつけるのが親の務めでもあったわけです」としています。

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