蕎麦の殿様~三遊亭圓生



蕎麦は好きであるか?

蕎麦の殿様~三遊亭圓生

さる殿様、ある日親戚の園遊会に呼ばれて、その席で蕎麦打ちの実演を見ます。

殿様は、蕎麦というものは最初から細長いものだと思っていたが、ああやって出来るものかと大層感心してお帰りになります。

屋敷に帰った殿様、家来を集めて蕎麦が好きか嫌いかと聞き、一同大好物だと答えますと、殿様は予が蕎麦を打ってつかわす。と言い出します。

家来一同訝しみながらも、勝ち戦の際に大将が「勝ち蕎麦」を打って家来に振る舞うという話もあるがと話しております。

殿様、蕎麦の元を持ってまいれ、馬タライを持ってまいれ、辻番の六尺棒を持ってまいれとと言いますが、そんなもので作られてはたまらないと、そば打ちの道具を一揃い取り寄せます。

殿様、颯爽とたすきを十字にかけ、はかまの股立ちを高々と取って蕎麦作りに挑みます。

粉が多い、水が多い、ちと柔らかい。粉を足せ。固すぎる。水じゃ粉じゃと蕎麦が半切りに山盛りになってしまいます。

これから麺棒へ巻こうという段になり、殿さまは一生懸命。汗が流れ。水っ鼻やよだれも垂れて蕎麦の中に練りこまれていきます。

家来一同、あの「お練り込み」を頂戴するかと思ってうらめしそうな顔をしている。

やっとのことで麺棒に巻きますが今度は麺棒が抜けない。無理矢理に抜くと蕎麦はくしゃくしゃになってしまいます。

切ってみると、薄いのは素麺のよう、厚いのは下川うどんのおばけ。茹でるのも火が通る前にあげてしまいます。

汁だけは御前所から来たもので、これだけはまとも。

殿様、着替えて上座に着座、家来の者は両側にずらりと並びます。
「今日は世の馳走である。遠慮いたさずたんと食べられい」

家来は箸が進みませんが殿様が睨んでおりますので仕方なく食べ始めます。しかし、麺は歯べとべととからみつき、蕎麦がきのようなものの中からは粉が出てくる。

殿に「どうであるか」と聞かれた家来、「誠に見事な出来ばえでございます」と答えると殿様は喜び「代わりをつかわせ」。また空くと代わりをつかわせ、代わりをつかわせと勧められます。

家来たちは仕方なく口に押し込んで下城しますが、皆腹を下して寝ることも出来ず、雪隠と寝床を往復することになります。

覚書

殿様のために家来が難儀をするという噺で、マクラの面白さも絶品ですが、残念ながらなかなか演り手がありません。

将棋の殿様」も将棋に凝った殿様が家臣を相手に我儘放題。「茶の湯」や「幇間腹」などは殿様ではありませんが、弱者の悲哀を笑い飛ばしてしまう、同じ匂いのする落語は数多くあります。

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