天狗さし~桂米朝






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テンスキ屋を始めるには

天狗さし~桂米朝

昔、京都五条に念仏尺(ねんぶつさし)という竹の物差しを売っている店があった頃。ご隠居の家に、相談があると訪ねてきた男が「食べ物商売を始めようと思い、店の手金も打ってきた。世間にないすき焼き屋、テンスキ屋をやる」と言います。

テンスキとは何だと聞かれ「天狗のすきやきだ。カラス天狗を捕まえてきて、料理するところも見せる。旨いか不味いかは別にして、話の種に一度食べてみようと流行るのは間違いない」と自信満々。ご隠居も「それは流行るだろう」と言いますが、どこから仕入れるのかと聞きますと、それを相談にきたのだと言います。

ご隠居呆れますが「天狗と言えば本場は京都の鞍馬山だろう。今でも居るかどうはわからないが、木剣の打ち合う音が聞こえたりするという話はあるのでひょっとしたらまだ生き残っているかもしれない」と言います。

男は太い竿竹に鳥黐(とりもち)をどっさり持って鞍馬山を登ってまいります。道行く人に天狗の居場所を聞くと「奥の院の大きな杉の木に、夜中に一度は降りてきて羽を休める」と言うので奥の院へ向かいます。奥の院の杉の木の近くでしばらく待っていましたが、山を登った疲れで居眠りをしてしまいます。

さて夜中。その日に限って奥の院で”行”が行われ、夜中の行を終えた赤い衣をまとった一人の坊さんが、御堂の扉を開けて出てまいります。扉の開く音で目を覚ました男、見ますと坊さんが階段を降りてきたところへ風が吹いて、着ていた衣が風にひらひらの翻ったのが羽のように見えます。

天狗も偉くなると羽が赤くなるのか。これは大天狗らしい。こいつを獲ったら四十人前くらいの天狗すきができると陰に隠れ、坊さんが来たところで飛びかかります。

覚書

念仏尺(ねんぶつさし)は、江戸時代後期から明治・大正頃まで京都を中心として作られた、竹製の裁縫用の直尺で、昭和になって廃れてしまいます。

発掘された念仏塔婆に刻まれていた尺(目盛)を基準にしたところから”念仏尺”の名前がついたというのが通説ですが、三代目 笑福亭福松(文の家かしく)は、地元に伝わる由来として、東山の西大谷本廟あたりで伐採された竹を材料にするところから、明け暮れ念仏を聞いて育つ竹を物差し屋がシャレて名付けたものであるとか、尼さんが念仏を唱えながら作ったからというのを紹介していました。

『京都府史』によると、この噺に出てくる念仏尺屋(大和屋)は本願寺の廟所前にあり、初代当主が「念佛二凝固リタルモノ」で念仏を唱えながら作って名を高めようということから”念仏尺”として売り出したというのが記録に残っていますので、まんざら作り話でもなさそうです。

ともあれ、この”念仏尺”は精密さや正確さに定評があり、裁縫はもちろん西洋尺度を曲尺に換算するために、蘭学者や西洋砲術家も好んで利用したと言われます。この噺も”念仏尺”がどんなものであるかがわからなくなるにつれて廃れましたが、米朝が笑福亭福松に教えてもらって工夫を加えて復活させ、東京では二代目の桂小南が持ちネタにしていました。

余談ながら、笑福亭福松はさほど上手い噺家ではありませんでしたが、橘ノ園都と並んで上方落語の生き字引と言われ、米朝に「地獄八景亡者戯」をはじめ、貴重な噺を伝えた人でもあります。

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鈴々舎八ゑ馬/天狗さし

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