生きている小平次・二つ面~林家正蔵



小幡小平次二題

生きている小平次~林家正蔵


再生できない方はこちら(Veoh)

五月半ば、奥州郡山安積沼(あさかぬま)に船を浮かべて釣りをしている二人の男。
二人は幼馴染で、江戸の役者 小幡小平次(こはだ こへいじ)と太鼓打ちの那古太九郎(なこ たくろう)。

小平次は、太九郎の女房おちかを自分にゆずってほしいと頼みます。太九郎は断り、どうしてもと言うならおちかに俺を捨てさせろと言います。

小平次は命がけで添い遂げてみせる、太九郎はやれるものならやってみろと口論になり、太九郎はその大事な命が無くなったらどうすると、板子でめった打ちにして沼へ蹴り落とします。

元結が解けてさんばら髪、額から血を流した小平次が船へ必死で這い上がろうとするのを「まだ生きてやがったか」と板子で再び打つと、小平次は油のような沼の中へと沈んでいきます。

十日ばかり後、江戸の太九郎の家ではおちかが鏡台の前で湯上がりの化粧をしておりますと、小平次が入ってきます。

小平次の割れた額から血が流れ、着物もびっしょりと濡れている。
おちかに「太九郎は死んでもう帰っては来ない、俺が殺して沼に沈めた。いつ役人に捕らえられるかもしれないから一緒に逃げよう」と誘います。

おちかが二階へ上がって支度をしているところへ太九郎が旅から帰ってきて「おちか」と声を掛けますが返事が無い。

土間の隅に小平次を見つけて驚き「おちかはお前にくれてやる」と言います。
二階から降りてきたおちかは太九郎を見て、小平次の嘘を責めますと、小平次は「太九郎がいいと言ったから、一緒に行こう」と言います。

太九郎は道中差しを抜いて小平次をひと突きにしますと、おちかは「喉に止めをさせ」と言います。

仲の良かった幼なじみを本当に殺してしまったと泣き崩れる太九郎。

それから三月ばかり、あちこちを逃げ回っている旅支度のおちかと太九郎の二人が、月もない真っ暗な木更津の海辺で近くの切り株に腰を下ろして休んでいる。

太九郎はおちかに、昨日宿場の行灯の脇に小平次そっくりの男が立っていた。「小平次はまだ生きている。」と言い出します。

安積沼でも一度死んだものが江戸まで帰ってきた。道中差しで刺したがやがて生き返って、お前を狙っているのだと言います。

小平次が生きているのなら大手を振って江戸へ帰れると言うおちか。小平次にやさしくしてやれろうかしら、その時には幾度でも殺してやればいいと言う。

恐ろしい女だと言う太九郎、おちかを置いて逃げるように立ち去ります。

おちかが後を追っていきますと、二人が座っていた切り株のあたりに提灯の灯りがともり、小平次が二人の後を追っていきます。

覚書

「幽霊が怖くってコハダが食えるけぇ!」という啖呵も流行ったほどに知られた話で、伝奇小説『復讐奇談安積沼』(享和三年(1803年) ふくしゅうきだん あさかのぬま)に始まり、

1957年に映画化(青柳信雄監督 小平次:二代目中村扇雀 太九郎:芥川比呂志 おちか:八千草薫)
1970年代にはテレビドラマ「雨の古沼」「怪談 夜泣き沼」
1982年に再度映画化(監督:中川信夫 小平次:藤間文彦 太九郎:石橋正次 おちか:宮下順子)されています。

「二つ面」は、正蔵の新作落語で、こちらは小平次の幽霊が出てきますが怪談ではなく正蔵自身をモデルにしたと思われる、噺家が主人公の滑稽噺で妙な味のある作品です。

二つ面~林家正蔵

怪談噺を得意とする噺家の柳亭西柳。弟子の佐太郎と最近の客は怪談噺で怖がらずに笑っているなどと話しをしながら帰っていると、追い剥ぎが突然金を出せと声をかけます。

佐太郎は驚いて逃げ、残された西柳が、割り銭は逃げた佐太郎が持っているので何もなすが、追い剥ぎも初仕事だろうと羽織と財布の中の銭を渡そうとします。

受け取ろうとした追い剥ぎ、突然悲鳴を上げて逃げていきます。

「師匠」呼ぶ声に振り向くと、西柳得意の怪談噺「生きている小平次」の小幡小平次の幽霊が現れます。

今夜は深川の寄席に師匠の噺を聞き行き、仲良くなろうと出てきたと言います。

立ち話も気が利かないので松島町に部屋があると誘われ、肩につかまり目を閉じるとまたたく間に家に到着します。

この家は自分を殺した太九郎の子孫のもので、恨みを晴らせば今度はその子孫の守り神になるのだと言います。

寿司をつまみながら、さっき弟子と怪談話で最近の客は笑うと話していたが、笑わない方法がある。と言い出します。

師匠が高座でかぶる面、作りはいいが一つだから客が笑う。頭の後ろにも面をつけて頭を回して見せれば客はぎょっとする、二つ面にすれば笑わないと教わります。

小平次の幽霊が招いてくれたものか、寄席は大入りが続き、夏は怪談話の掻き入れ時で、いつとはなしに二つ面にするのを忘れていましたが、秋口になって風邪をこじらせたのが案外長引きます。

寄席が終わって西柳の枕元に来た弟子の佐太郎が、下座のおたきの娘、お艶と結婚をしたいと言い出します。

子供もできたと知った西柳は、自分の師匠の名前を継いで二代目 柳亭左柳の名を継ぐように勧め、小平次の幽霊から教わった二つ面の話を教えます。

いい話をいただいたので祝いに何か買って来ましょうという佐太郎に寿司を頼み、佐太郎が出かけますと、小平次の幽霊が現れます。

前にも話したが、人を恨んで幽霊になったあとは守り神になる。自分もだんだん箔がつき、極楽へ行くことになって当分会えないので挨拶に来たと言います。

ついては、極楽に行った幽霊が娑婆に残した寿命が積もり積もって三百年あるが、これを師匠にあげると言って消えてしまいます。

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