鶉衣(うずらごろも)~三遊亭圓生






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己の心に仕える

鶉衣~三遊亭圓生

鶉の流行 伊勢屋の娘の我儘

時代によってさまざまなものが流行りますが、江戸時代に鶉(ウズラ)が流行ったことがある。伊勢屋の娘が伊勢屋が地主になっている長屋の浪人 曽根門太夫の飼っている鶉がどうしても欲しいと言い出し、番頭の彦助が同じ長屋の住人 源兵衛に頼みに行ってもらいます。

源兵衛は門太夫に一両で譲ってほしいと頼みますが、「無礼者め!」と表に放り出され、亀の尾(尾てい骨)を打って尻をさすりながら帰ってきます。

家主の交渉

そこへ入ってきた長屋の家主。事情を聞いて門太夫は話をしてわからない男ではないと鶉の一件を引き受けます。家主が訪ねて「自分の道楽に鶉を飼いたいと思うが、その鶉を私に譲ってもらえないか」と聞きますと、「伊勢屋の娘はことのほか我儘者でござるな」と伊勢屋の依頼だと見抜きます。

家主は「では腹を割って」と伊勢屋の頼みであることを話し、改めてゆずってほしいと言いますが聞きません。怒った家主はそれなら店を開けろと言うと門太夫は家主を表に放り出し、家主も亀の尾をしたたかに打ってしまいます。

頭の苦手

今度は鳶の頭を呼びますと、頭はお嬢様の悩み事と聞いて、自分に恋煩いをしていると勘違いし「私は女房と別れてお嬢様と一緒になっても良い」と言いますが、鶉の一件と聞いて、あの浪人と馬は苦手なのだと断ります。

「今年の正月、連雀町の酒屋の前で馬が暴れて逃げようとしたが体が動かずにいたところ、あの浪人が取り押さえた。あの浪人を見るだけで馬を思い出すので勘弁してください。代わりに可愛い猫が友達のところで生まれたのでもらってくる」と返事も聞かずに駆け出してしまいます。

門太夫と番頭彦助

伊勢屋の旦那は娘に諦めるように言いますが、娘は承知しません。番頭の彦助が「では私が」と言って菓子折りを持ち、無礼を詫びて気が立っている時に話をしてもまとまらないと、その日はそのまま帰ります。

翌日、三日、四日と過ぎ、七日目。娘もじれてきますが、彦助は「今日はきっといただいて帰ります」と言って出かけます。門太夫が鶉にエサを与えているの見て「たいそうかわいいものでしょうな」と言いますと、門太夫は「幼少の頃から鶉が好きでたくさん飼った。鶉居(じゅんきょ)とは住まいの定まらぬこと。また、鶉衣(うずらごろも)は粗末な衣服のことを言う。今浪人となってこのような暮らしをしているのも前世からの因縁かと思う」と話します。

この話を聞いた彦助「自分は伊勢屋の前に捨てられた捨て子で、ご主人にここまで育ててもらった。そのご主人がふさぎこんでいて、その訳はご存じの鶉の件です。育ててくれた主人への恩返し。どうぞ私にお譲りください」と頼みます。

門太夫は「明日返事をしましょう」と言い、彦助は喜んで帰ります。

門太夫の志(こころざし)

翌日、彦助が門太夫の家に行くと、門太夫は小鍋をつつきながら一杯やっており、彦助を部屋に上げて酒や鍋を勧めます。彦助が「昨日お話の返事を」と言うと「鶉はもういない。この鍋の中です」

足繁く参られるあなたのご心中、伊勢屋の主のご胸中、家主の店をあけろというたびたびの催促も無理とは思わない。しかし、お手前に主人に仕える志があれば、拙者もまた己の心に仕えるところがある。今朝、鶉に「可愛きそちを金品に替えるよりは、むしろ我が腹中に納まる方がそのほうも望みであろう」と聞けば、鶉がグウグウと鳴いて承知いたした。日頃可愛がっていた鳥を自分の手で料理する心中を察してください。

百万の大軍を率いる将軍といえども、謀事をもってこれを奪うことはできない。匹夫下郎たりともその思いつめた志が固ければ、いかなる策略をもってしてもこれを覆すことはできない。憚りながら曽根門太夫、鶉はお譲り申さぬとご主人にお伝えください。

彦助が店に帰ってこの話をしますと、娘も夢から醒めたようになり、門太夫に謝りに行きます。

その後の曽根門太夫

その後。中川山城守という大名が、家臣の岡部万右衛門から、浪人者が連雀町の酒屋の前で馬が荒れ狂って暴れているのを猫を扱うように鎮めたという話を聞き、馬術に熱心な山城守は「そのような者ならばぜひ召し抱えたい」と調べさせます。

万右衛門が家主を訪ねて引き合わせを頼みますと、家主は「正直だが強情にすぎる」と鶉の一件を枝葉をつけて話して「召し抱えはやめたほうがよい」と言います。

これを聞いた殿様、家主の脅しにも恐れず、金品の誘いにも乗らず己が一念を貫くはあっぱれなる武士気質。近頃は世慣れた腰抜け侍の多い中に左様な気骨のある奴がおるはあっぱれ。余は門太夫を召し抱える。と鶴の一声。門太夫は百五十石で召し抱えられることになります。

それからしばらくして、槍持を従えて馬に乗った門太夫に会った源兵衛。びっくりして家主に門太夫はどうして出世をしたのかと聞きますと、家主は、どうも鶉を食べたのが出世の元らしいと答えます。
「そうか、あっしは昨日、鳩を食った。出世しますかね?」「鳩を食った?それは気をつけろ、豆鉄砲を喰うかもしれない」。

覚書

歌舞伎・狂言作家 宇野信夫の作で、三笑亭円生が昭和40年(1965年)に自分に合うように落語に仕立て直した噺です。

サゲも圓生が考えたものですが、「曽根門太夫出世の一席」で降りてもよかったかもしれません。

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