鬼あざみ~桂文團治






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武蔵野にはじかるほどの鬼あざみ

鬼あざみ~桂文團治

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桂文紅の師匠、文團治の貴重な口演です。

清吉とおまさ

母親に金を一貫五百くれとねだる子供。芝居を観に行って寿司を買って食べたいと言う。母親は”おまさ”という継母でしたがいたって子供思いの人。「寿司を買って食べるような芝居ならお父っつぁんが休みの日に連れて行ってもらいなさい、芝居が見たいなら芝居に入れるだけのお金をあげる。お腹が空いてるなら家でご飯を食べていきなさい」と言います。

清吉は「継子だからくれないのか。死んだ母親ならお父っつぁんに内緒でくれた。何でそう継子が憎い」と言います。

おまさは継子も本当の子もないと言いますが、清吉は聞きません。おまさがで出してくれたお膳を足で庭へ蹴り落として表へ出て、水溜まりで尻餅をついて腰から下泥だらけにして遊びに行きます。

清吉と安兵衛

酔って帰ってきた父親の安兵衛が泥だらけの清吉を見つけて、どうしたのかと聞きますと、清吉は、お母はんに飯を食べさせてくれと言ったら「子どもは日に一度食べらればよい」と言われ、しかしあまりにお腹が減ったので勝手にお膳出して食べようとしたら表に引きずり出されて水溜まりに倒された。と言います。

安兵衛は怒って家に帰り、おまさを責めます。おまさは継母だけに言い訳が口応えになり、逆上した安兵衛は前後構わず手元の土瓶を投げ、茶碗を投げ、立ち回りの大喧嘩になります。この清吉に関わる喧嘩は三日にあげず、誰一人止めに来ません。

家主の話 清吉の行状

通りかかった家主が酔っている安兵衛を肩に掛けて自分の家へ連れて帰ります。板の間に寝込んだ安兵衛。目が醒めて家主の家と知って恐縮して帰ろうとしますが家主が呼び止めます。

清吉がうちの店で品物を一つ持って帰り二つ持って帰る。私が言えば人さんの大事な息子に傷を付けることになると放っておいたが、近頃は段々と遊びが変わってきて銭箱を狙って金を掴んで出て行くようになったと話します。

子どもが可愛いと思えば他人の飯を食わしなされ。今のうちに少し難しいところへ奉公にやれば真人間なる。また、あんないい嫁さんを粗末にしたら罰が当たる。たまには優しい言葉のひとつもかけてやれと言います。

清吉を奉公に出す

帰った安兵衛は包丁を持ち出し、今のうちに清吉を殺してしまうと言い出します。おまさはびっくりして止めますが振り切って奥へ入る。しかし、どうしても殺すことができません。どうしたらよかろうと夫婦で話し、家主に頼んで清吉を奉公に出します。

清吉を奉公に出した後は、安兵衛も三回の酒は二回、二回の酒は一回にして一生懸命働きます。こうなると夫婦仲というものはいたって円満に仲むつまじく暮らしております。

十年後 清吉が家主に挨拶

月日に関守なく光陰は矢の如く。清吉が奉公に出ましてから十年後。六月の半ば、ただいまと違います旧暦の六月で暑い最中。家主の表へ立ちましたのは立派な形をした若い衆。家主に「今から十年前あなたのお世話になりまして奉公にやっていただきました。安兵衛の倅の清吉でございます」と挨拶をします。

立派になったと喜ぶ家主「早く家に帰って顔を見せてやれ。清吉を奉公に出してから、安兵衛が会いにいきたいというのを里心がついてはいかんと止め、つい二三日前にも清吉は生きているか死んでしまったかと涙を流していた。その立派な姿見たらどんなに喜ぶか」。

清吉の金

家主の家を出て我が家へ帰ってきた清吉。安兵衛は丁度その日は商売が休みとみえて、素裸の越中褌一つという格好。小さな飯台へ二品三品肴を並べて一杯やっています。

おまさが清吉と気付いて安兵衛も喜び「湯を沸かせ」「行水させろ」とおまさに言いますが、おまさは横町の風呂屋へ行けとすすめ、清吉を浴衣に着替えさせて風呂屋に行かせます。おまさは「清吉の着ている着物は相当お金のかかっているもの。奉公人にあれだけいい格好をさせる家はないと思う」と言います。

安兵衛は「清吉の持ち物はないか」と聞き、財布を見てみると小判がザクッというほど入っている。

清吉との別れ

清吉が帰ると安兵衛は清吉を近くへ呼び「三つの癖は百までと、まだ悪い根性が直らんのじゃな。この父親、身貧に暮らせども、人さんのものはチリすべ一本かすめたことはない。親が子に手を合わして拝めば、世間の人は何と笑うか知らんが、この通り、手を合わして拝む。どうぞ改心して真人間になってくれ」と言います。

清吉は「そうおっしゃられては仕方がない。奉公には参りましたが三月も続かず。主人の家を飛び出して、どこへ行くともなくさまよう内、悪いことは数重ね、今じゃ東の土地で”鬼あざみの頭”といわれる身の上」

「今日はお暇乞いかたがた、勘当してもらいに帰った。このお金は僅かですが差し上げましょう」と言います。安兵衛は「人様のものを盗ったものなど”びた一文”いらない。とっとと出て行け!」と怒鳴り、清吉は出て行きます。

これを苦にいたしまして、おまさは病死をいたします。三年後、安兵衛が戎橋から身を投げようとするところを、通り掛かりまして助けましたのがこの鬼あざみの清吉。

『武蔵野にはじかるほどの鬼あざみ、今日の暑さに枝葉しおるる』と辞世を残しまして、三十二歳を一期にお仕置きになります。盗みはすれど非道はせず、ある所のものを取り出しては貧しい人を助けてやったという、義賊鬼あざみ清吉、生い立ちのお話でございます。

覚書

実在の盗賊 鬼坊主清吉を題材とした講釈ネタで、上方には珍しい人情噺(世話噺)です。文團治のあと弟子の文紅に引き継がれましたが、その後は長らく絶えていました。平成元年(1989)に桂南光が『鬼あざみ 上』、米朝が『鬼あざみ 下』を演じています。上は文團治のものとほぼ同じで、下は米朝自身が学生時代に東京の講釈場で聞いたものをもとに復活させたもので、清吉の島抜けを主題としていました。音源のないのは非常に残念です。

歌舞伎の『小袖曾我薊色縫』(こそで そが あざみの いろぬい)『花街模様薊色縫』(さともよう あざみの いろぬい)『十六夜清心』(いざよい せいしん)で知られる他、池波正太郎の『鬼平犯科帳』などにも登場しています。

発端は『双蝶々』に似ていますが、東から西へ、西から東へという記録はなく、いずれも上記の歌舞伎か講釈をもとにして別々に作られたものと思われます。

鬼坊主清吉は奉公先で盗みを働いて捕縛された後、徒党を組んで強盗、ひったくりなどを繰り返し、追われて上方へ逃亡するも文化二年 (1805) 年4月に京都で捕縛され、同6月27日、市中引き回しの上、仲間2名とともに小塚原刑場で打ち首獄門となります。

落語 鬼あざみ ディスコグラフィ

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