ちきり伊勢屋~三遊亭圓生・古今亭志ん朝・柳家さん喬






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親の因果が子に報へども 積善の家に余慶あり

ちきり伊勢屋~三遊亭圓生

【音声のみ】6代目三遊亭 圓生 「ちきり伊勢屋」

麹町の質屋「ちきり伊勢屋」の若旦那傳次郎(でんじろう)が、評判の高い易者の白井左近を訪ねて自分の縁談の吉兆を見てもらいたいと申し出ます。左近は「縁談をなさると後に嘆きを残すことになる。あなたは死にます。来年二月十五日の正九つに死ぬと告げます。」

傳次郎の父が巨万の富を作ったのには、身代を残そう増やそうと金に目が眩み、人の情がわからずに強欲な商いで人を泣かせてきたためだ。あなたにその因果がめぐってきということだ。ヤケにならずに人に慈善をし、施しを行っていけばその徳によって今度は長生きをするように生まれ変わることもできましょう。

気を落として店に帰った傳次郎、番頭や店の主だった者を集めて「今日限り商売をやめる、番頭には千両、他のものにも相応を手当をして暇を出す。」と言い、その後は町を歩き回って施しを行います。ある日、赤坂の喰違坂で首を吊って親子心中をしようという母娘に百両を与えて助け、その後も貧乏な人や病人を見れば金を与えて助けていきます。

覚書

柳家に受け継がれた話で、傳次郎の葬儀までを前編、休憩をはさんで後編、合わせて二時間を超える大ネタです。昭和期では圓生、正蔵が得意としました。圓生は二代目小さんの速記を見て覚え、正蔵は三代目小さんの弟子になっていた時期に覚えたものと言います。

この噺のもともとは、中国の明の時代(1368年~1644年)に陶宗儀(とうそうぎ)の書いた『輟耕録』(てっこうろく)という随筆中の『陰徳延寿』。岡本綺堂の中国怪奇小説集より転載しておきます。

むかし真州の大商人が商売物を船に積んで、杭州へ行った。時に鬼眼という術士があって、その店を州の役所の前に開いていたが、その占いがみな適中するというので、その店の前には大勢の人があつまっていた。商人もその店先に坐を占めると、鬼眼はすぐに言った。「あなたは大金持だが、惜しいことにはこの中秋の前後三日のうちに寿命が終る」

 それを聞いて、商人はひどくおそれた。その以来、なるべく船路を警戒して進んでゆくと、八月のはじめに船は揚子江にかかった。見ると、ひとりの女が岸に立って泣いているのである。呼びとめて子細を訊きくと、女は涙ながらに答えた。

「わたくしの夫は小商こあきないをしている者で、銭五十緡(びん)を元手にして鴨や鵞鳥を買い込み、それを舟に積んで売りあるいて、帰って来るとその元手だけをわたくしに渡して、残りの儲けで米を買ったり酒を買ったりすることになって居ります。きょうもその銭を渡されましたのを、わたくしが粗相で落してしまいまして、どうすることも出来ません。夫は気の短い人間ですから、腹立ちまぎれにぶち殺されるかも知れません。それを思うと、いっそ身を投げて死んだ方がましでございます」

「人間はいろいろだ」と、商人は嘆息した。「わたしも実は寿命が尽きかかっているので、もし金で助かるものならば、金銀を山に積んでも厭わないと思っているのに、ここには又わずかの金にかえて寿命を縮めようとしている人もある。決して心配しなさるな。そのくらいの銭はわたしがどうにもして上げる」

 彼は百緡の銭をあたえると、女は幾たびか拝謝して立ち去った。商人はそれから家へ帰って、両親や親戚友人にも鬼眼が予言のことを打ち明け、万事を処理しておもむろに死期を待っていたが、その期日を過ぎても、彼の身になんの異状もなかった。

 その翌年、ふたたび杭州へ行って、去年の岸に船を泊めると、かの女が赤児を抱いて礼を言いに来た。彼女はそれから五日の後に赤児を生み落して、母も子もつつがなく暮らしているというのであった。それからまた、かの鬼眼のところへゆくと、彼は商人の顔をみて不思議そうに言った。

「あなたはまだ生きているのか」
 彼は更にその顔をながめて笑い出した。
「これは陰徳の致すところで、あなたは人間ふたりの命を助けたことがあるでしょう」

岡本綺堂 中国怪奇小説集13より

ちきり伊勢屋 古今亭志ん朝

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柳家さん喬

落語 ちきり伊勢屋 ディスコグラフィ

林家正蔵 柳家さん喬

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