特集 秋の噺くらべ
秋をテーマにした落語は、東高西低と言いますか江戸落語には『目黒のさんま』を筆頭に結構ありますが、上方落語には数えるほどしかありません。
春は花見、夏は暑さ、冬は寒さや年末年始など話題が多くありますがしみじみとした秋は噺になりにくいのでしょうね。
旅の噺などは冬や夏には旅はあまりしないだろうということと、伊勢参りなどは農繁期が終わった秋に多く催されたことから秋の噺だろうということになるものの、秋らしさや秋の風物などが盛り込まれている噺はほとんどなく、語り手や聞き手によって春でも秋でもどちらでも解釈できます。
一方、小咄では秋の味覚の代表格、松茸を題材にしたものは山ほどあり、ほとんどが下ネタです。
たとえば松茸を買いに来た奥さんが大きな松茸も小さな松茸も十五銭と聞いて、なぜかと聞けば松茸屋は「松茸は全部つっこみでございます。」
母親の胎内で何十年も過ごして生まれた中国のある聖人。母の胎内はどのようなところだったかと聞かれ、「季節で言うと秋のようなところだった。暑くもなく寒くもなく時々下から松茸が出る。」
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このページでは『落語百選』(麻生芳伸著)で秋の落語として選ばれている25の演目と、管理人が秋に聞きたくなる落語を選んでみました。
秋の落語(『落語百選』・麻生芳伸著)
1.道具屋 | 毎日ぶらぶらと遊んで暮らしている男が叔父さんの道具屋を手伝い | 柳家小さん・桂枝雀・柳家小三治・桂文治 |
2.天災 | 気短な男が近所のご隠居のところへ駆け込んで | 桂ざこば・春風亭柳橋・桂吉朝・立川談志 |
3.つるつる | 岡惚れも三年すれば色のうち | 桂文楽・古今亭志ん生・立川談志 |
4.目黒のさんま | さる殿様、秋のよき日に遠乗りを思い立ち、馬を駆って屋敷を飛び出します | 三遊亭圓生・三遊亭金馬・春風亭柳橋・林家正蔵・金原亭馬生 |
5.厩火事 | 髪結いの女房が孔子の故事を聞き | 古今亭志ん朝、古今亭志ん生・桂文楽他 |
6.寿限無 | 前座噺を真打が語ると面白い噺になるのか | 立川談志・柳家喬太郎・春団治他 |
7.時そば | 今何時だい? | 古今亭志ん朝・柳家喬太郎・柳家小三治・桂文我・桂枝雀 |
8.五人廻し | 売れっ子の花魁喜瀬川を待つ五人の客に | 三遊亭圓生・ 五街道雲助・ 古今亭右朝・ 古今亭志ん朝・ 古今亭志ん生・林家正蔵・立川談志 |
9.ねずみ | 仙台の宿。江戸から来た男が子供に呼び止められ、仙台一小さな宿屋「ねずみ屋」へ | 立川志の輔・柳家さん喬・桂歌丸 |
10.やかん | この世に知らないものはないというご隠居に | 立川談志・三遊亭金馬・桂文治・三遊亭圓生 |
11.山崎屋 | 遊び人の若旦那が三百円の集金に行ったまま帰ってこない。 | 立川志の輔・林家正蔵・立川談志・三遊亭金馬 |
12.三人無筆(向う付け) | お世話になったご隠居が亡くなったと聞いた無筆の八五郎。葬式の帳場を頼まれ・・ | 笑福亭仁鶴 |
13.真田小僧 | 他所のおじさんが来たことをお父つぁんに言うよ | 古今亭志ん朝・三遊亭圓生・古今亭志ん生他 |
14.返し馬(品川の豆) | 新婚の男が女郎買いに誘われ・・ | 古今亭志ん好 |
15.茶の湯 | 茶会に来なけりゃ店立てだ | 立川志の輔・三遊亭圓生・三遊亭金馬・柳家小三治・桂文明 |
16.宿屋の仇討 | 旅の宿 騒々しい隣の部屋の男たちに | 桂米朝・立川志の輔・古今亭志ん生他 |
17.一人酒盛 | また燗をつけといてくれよ | 三遊亭圓生・桂米朝・柳家小さん・笑福亭松鶴・桂枝雀・古今亭右朝 |
18.ぞろぞろ | 教科書に載った落語 門前の茶店の草鞋が | 立川談志・古今亭志ん朝・三遊亭圓窓 |
19.猫怪談 | 与太郎の養父が亡くなったと聞いて大家が訪ねてきますと | 三遊亭圓生・柳亭左龍 |
20.野ざらし | 鐘がボンと鳴りゃこりゃさのさ | 春風亭柳好・桂米朝・古今亭志ん朝・立川談志・柳屋小三治 |
21.碁どろ | 碁の好きな泥棒が碁石の音にたまらず・・ | 柳家小さん・古今亭志ん朝・金原亭馬生 |
22.干物箱 | 遊びが過ぎて父親に外出を禁止された若旦那。本屋の善公を身代わりに | 古今亭志ん朝・志ん生・五街道雲助他 |
23.死神 | 消える 消えるよ・・ | 三遊亭圓生・立川志の輔・立川談志・柳家小三治・柳家さん喬・三遊亭金馬 |
24.粗忽の釘 | こちらは向かいですので隣へ行きなさい | 桂枝雀・滝川鯉昇・柳家小さん・春風亭柳朝・柳家小三治 |
25.子別れ | 「痛いだろうけれど我慢をおし」 | 古今亭志ん朝・古今亭志ん生・立川談志・笑福亭松鶴・三笑亭可楽 |
管理人選 秋に聞きたくなる落語
まめだ | 米朝の愛した落語・語るたび涙を禁じえない「まめだ」 | 桂米朝 |
八五郎坊主 | つまらん奴は坊主になれ | 桂枝雀・桂文我・桂雀々・林家染二 |
安兵衛狐 | 上方の『天神山』は春の噺なのですが東では萩を見に行く秋の設定で演じられます。 | 桂枝雀・古今亭志ん生・桂雀松・林家染二・桂文枝 |
笠碁 | 秋の長雨、喧嘩した碁敵の家に入りかね | 柳家小さん・金原亭馬生・古今亭志ん生・立川談志・桂ざこば |
柳田格之進 | 月見の場面が出て来るので秋に・・ | 立川志の輔・古今亭志ん生・古今亭志ん朝 |
さんま芝居 | 道具方が煙花火を忘れ、幽霊が出るに出られず。 | 三遊亭円歌 |
さんま火事 | 強欲な地主 吝い屋をなんとかやりこめたいと | 桂三木助 |
狐芝居 | 山の中で芝居の声が聞こえてきて | 桂吉朝 |
蛙茶番 | 蛙が舞台に出られない理由(ワケ)とは | 三遊亭圓生・三遊亭金馬・柳家小三治・三遊亭小遊三 |
芋俵 | 大店に盗みに入る二人の盗賊は、与太郎を芋俵に入れて | 柳家小さん・桂文三・柳亭市馬・三遊亭萬橘・三遊亭圓彌 |
位牌屋 | ケチがついて廃れつつある噺です | 三遊亭圓生 |