先用後利~立川志の輔



きっとその薬屋は隠密だ

先用後利~立川志の輔

江戸で紙屋を営む番頭が外出から帰ってくると、丁稚の定吉が留守の間に越中富山から来たという薬屋さんが薬箱を置いて行ったと言います。

定吉に薬箱を開けさせてみますとぎっしりと薬が詰まっています。代金も取らず半年ほど経ったらまた来て使った分だけお金をいただくいう。

番頭は、それはおかしいだろう、うちが引っ越すかもわからないし、普通はいくつ必要かと聞いてその分の代金を払うものだろう、そんな商いがどこにある。

きっとその薬屋は隠密だ。店の秘密を探りに来たか新手の強請りタカリだと、丁稚たちに、薬箱は物置部屋に放り込んで絶対に使ってはならないと言いつけます。

三ケ月ほどが経ったある日、番頭が出かけている間にお得意先の呉服店の近江屋さんが奥様と一緒に来ていろいろとご覧になり、美濃の紙を褒めて帰ったとのこと。

番頭はひさしぶりに大口の商いができると喜びますが、丁稚の様子がおかしく、問いただしてみると近江屋の奥さんが急に腹痛を起こしたので、物置の薬箱を思い出し、これを奥さんに飲ませたと言います。

番頭、よくも勝手なことをしくれた。隠密の薬を近江屋さんに飲ませて何かあったらどうする、本家に何と言い訳をする、私は聞いてない、何も知らないと言っているところへ、近江屋が入ってきます。

覚書

志の輔の故郷、富山の薬売りを題材にした新作落語です。
江戸時代の商家が舞台で、古典の人情噺と言われればそうかと納得するような味わいもあります。

富山藩の第二代藩主 前田正甫が腹痛薬の「反魂丹」を開発し「用を先にし利を後にし、医療の仁恵に浴びせざる寒村僻地にまで広く救療の志を貫通せよ。」という訓示を流して『先用後利』を徹底させ、現在まで受け継がれています。

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