おかふい~三遊亭圓生


お笑い・漫才芸人列伝お笑い・漫才芸人列伝
古今東西のお笑い・漫才芸人の貴重な映像・音声を集積。
明治・大正・昭和・平成・令和の数々の芸人を、映像と音声で紹介します。

Produced By 聴き比べ落語名作選


レトロアニメジャパンレトロアニメジャパンNEW!!
あの頃。夢中になって観たアニメやドラマ
昭和のアニメやドラマを映像で追体験!

Produced By 聴き比べ落語名作選


「かわふぃ」「いとふぃ」放送禁止の梅毒話

おかふい~三遊亭圓生

麹町三丁目の質屋 万屋右兵衛。番頭の金兵衛は堅い人でしたが、若い頃に友達に誘われて新宿の廓へ二三度遊びに行き、お土産に梅の毒をもらって鼻を無くしてしまい、女は恐いというので、いっそう堅くなりました。主の右兵衛が年頃で、そろそろ嫁を迎えなくてはならないが、平凡な女はいやだから江戸一番というのを女房に迎えたいといろいろ縁談があってもまとまらない。

ある日、右兵衛が浅草にお参りをして帰りに仲見世で出会ったのが年頃十八九の娘。お屋敷勤めをしたというようなごく堅い身なりながら粋なところもある。右兵衛は「天人が天下るという諺を聞いたが、もうこれより他にはない」と後を付いていくと本町辺の御大家のお嬢様。

八方から縁談が降るほど来ているというので、右兵衛は人頼みではいけないと自ら通い詰め、それほど思ってくださるのならと縁がまとまります。”りえ”という名で歳は十八、片時も離れないほど夫婦仲は好かったのですが、あまり良すぎてもいけない。右兵衛は、”あごで蝿を追う”というほどの病人となります。

医者は精のつくものを差し上げなければいけないと言い、りえも手を尽くしますが病は重くなるばかり。右兵衛はりえを枕元に呼び、「私はもう助からない。しかしお前が二度目の亭主を迎えて仲良く暮らす思うと悔しくて死に切れない。番頭の金兵衛のようにお前の鼻を削いでついでに髪も切って私におくれ。そうすれば男が近寄らなくなる。」と頼みます。

圓生百席(6)おかふい/お祭佐七/お化長屋

ソニーミュージックエンタテインメント
¥3,738(2025/03/19 15:44時点)

覚書

四代目の橘家圓喬が得意として、五代目三遊亭圓遊も時折掛けていたようですが、病気や容姿の差別云々がやかましくなった昨今はとんと聞かれません。

江戸時代には『入歯入鼻仕候』(入れ歯入れ鼻つかまつりそうろう)という看板で、木で作った入れ歯と鼻を売る店がありました。

梅毒というのは、性感染症の一種で、今はペニシリンで完治しますが昔は不治の病。梅毒にかかると必ず鼻が欠けるというわけではないものの、私が子供だった1970年代頃でも「梅毒になると鼻が落ちる」というのは常識のように聞きましたし、治療法の無い時代には鼻を無くした多くの人がいたということでしょう。

梅毒にかかると妊娠しにくくなるので、遊郭の経営者にとって都合がよく「梅毒にかかってやっと一人前の遊女」と推奨したために江戸を中心に広まってしまいました。また、民間では”水銀療法”と言って水銀を飲ませ、このために死んだ人も多かったといいます。

もう昔の病気と思いがちですが、現在、若い女性を中心に梅毒にかかる人が増えているようで、1960年台に1万人以上という流行期の後、落ち着きを見せましたが2016年には4077人。5年前と比べて5倍以上、40年前の水準に戻ってしまっています。

こういう噺をはむしろ注意喚起になっていいような気もしますがね。

『最上殿始末』と梅毒

さらに余談ですが、手塚治虫の漫画に『最上殿始末』というのがありました。単行本の『時計仕掛けのりんご』の中の一篇で、表題の物語も非常に興味深いものでしたが、この『最上殿始末』も強烈な印象の物語でした。

時計仕掛けのりんご

手塚プロダクション
¥297(2025/03/20 06:40時点)

貧乏農家の”しょんべ”は、女房の”うんこ”と、幼い四人の子供の6人で暮らしていたが、常々侍になって裕福な暮らしをしてみたいと夢見ていました。

ある日、侍たちが家にやってきて、しょんべが城に連れていかれたあと、女房や子供たちは殺されていしまいまいます。

剣術や馬術など一通りの武術をしこまれたしょんべは、ある日城主の最上義光に呼び出され、義光の影武者となります。

義光と見分けがつかないほどになったしょんべは、義光に「馬に乗り、門番に城門を開けさせろ」と言われます。門番は疑うことなく門を開け、しょんべはこんなに簡単に城外に出られることに驚きながら、女房と子供達に会ってみようと自分の家に立ち寄りますが、家は消失しており、村人に女房子供は家臣たちに殺され家に火をつけたことを知らされます。

恨み心頭のしょんべは、義光と笹姫の婚礼の際に義光を殺し、義光に成り代わって笹姫と初夜を迎えて笹姫を抱いたあと、自分が影武者であることを明かします。

笹姫は願掛けだと言って頻繁に出かけるようになります。しょんべは浮気をしているのだろうと責めますと、笹姫は自害をしてしまいます。

後日、笹姫が通っていた相手がひどい梅毒持ちであったことが判明し、しょんべは「奥・・・お前の勝ちだ」というところで物語は終わります。

この漫画が発行されたのが1972年。このくらいの時期でも梅毒=鼻が落ちる というのは常識的に頭に刷り込まれていたものなのでした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました